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「…この次の章で、千佳が言いますよね『わたしは、お父さんを知らないから』ってそれが次の世界を開いた鍵に見えたんです…」
ナナコはヒサギさんと並んでソファーに座って、持ってきた本を開いて話をしています。
大好きな本を書いてくれた作家の先生がすぐ隣にいて、ニコニコと笑ったり、時々、真剣な表情で中学生のナナコの話を聞いてくれています。
「ナナコちゃんは、どうしてそんな風に見えたのかな?これ?かずなり…和誠に千佳が言ってる、この言葉?」
隣に座ったヒサギさんは本に指で示します。ナナコのからだの横にくっついてくるみたいです。
あったかい、優しいお父さん…ナナコは少しだけヒサギさんに体をかたむけてしまいます。
「そう…かな。あの…わたし、小さい頃にお父さんを亡くしちゃってるんです。だからかもしれませんね。そういう風に見えちゃうのって。
千佳が自分と重なって思えて…だからとても年上の…お父さんみたいな和誠さんとのちょっと変わった…ええと、レンアイも…なんだかとても素敵に思えたんです。」
「レンアイ…中学生のナナコちゃんには、まだ、早いかもしれないね。千佳と和誠のこの先の、その…深い恋愛の展開は…」
ヒサギさんは、少し困ったように言います。
本の上で二人の手が触れます。暖かいヒサギさんの手。
『千佳と和誠の恋愛』…ヒサギさんの新作小説は、現実の世界が、いくつものページをめくっていくように変わっていく中を進む不思議な話です。
その中で、少女の千佳と、父親くらい年上の和誠は…楽しくて哀しい恋愛をして、とても綺麗な描き方ですが、本当の…セックスまでしています。
ナナコは小説を読みながら、主人公の『千佳』になって『かずなり…和誠』が大好きになっていました。
和誠にやさしく抱きしめてもらいながら、本当に体が熱くなっていたのを思い出していました。
「読んでいて…ナナコも和誠が…年上の…優しいお父さんみたいな和誠が近くにいるみたいに思えて。…あの…ヒサギさんは…こんな事言うと失礼かもしれないですけど、和誠に似てると思います。」
ナナコの隣、ヒサギさんは小説の中の和誠のように暖かく、座っています。ナナコは話をしながら小説の中にいるようにヒサギさんに体をかたむけてしまいます。
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